2021-01-01から1年間の記事一覧

死の凡庸さ

仕事が全然終わらない。もうすぐ1年が終わろうとしている。2021年、とくに下半期は精一杯駆け抜けてきた。とはいえ何か格好のつくものを残してきたわけでもなく、単に息切れしているだけである。比喩を抜きにして、最近は呼吸が浅く、苦しい。ぬかるんだ道に…

子犬不在の部屋

「発想がつぎつぎ湧く」ことがなくなってきた。風に乗る青い鳥を追うような、楽しい夢想のひととき。 近ごろ鳥追っかけてないな、と気づいたのは実家に戻ってしばらく経ってからのことである。実家には自分の部屋がない。ほぼ誰かと一緒にいる状況で、ひとり…

twentysevenclub

27で死ななかったら途中で下車することは許されない気がする

福島第一原発神社

犬を改造する夢を見た。もともと居間では8匹ほど白い大きな犬を飼っていた。毛足の長い犬だった。それらの内臓を切り離してはそのうちの1匹の身体に押し込む。臓器を結ぶ管の感触が手に残っている。ホルモンを噛んだときに似た弾力をたたえていた。6匹の犬の…

欠格

佐世子は右目が極端に悪い。ある日ベッドに座って向かいの壁の時計を見たとき、頭部がひとりでに右へ回転し、自分が左目の視野をフル活用して時刻を確認していることに気がついた。左目を手で隠してみると部屋は途端に輪郭を失う。立てた膝にかけている布団…

分断の国で

生きることは贖罪である。最悪なニュースが暴れ回るなか、あたたかな部屋で編み物をし眠りにつく。私ばかり平穏に暮らしてごめんなさいと泣く声がする。すでにじゅうぶん背負っているのに。生きることは贖罪だがあがなえる罪は限られている。泣いてもいいけ…