ケンタウロスの子守唄

マイノリティは再生産役割を果たさないでマジョリティにタダ乗りするばかりだという批判が間々見受けられる。心がちぎれそうだ。あえて生産性の話題に乗ってやるならば、一定の人びとが「常識」から外れた生き方を選択していくことが子どもたちのロールモデ…

それはスポット・ライトではない

自分の人生に光があるとすれば、それは驚いた瞬間に現れる。ふだんの私は絶望している。よく27年も生きてこられたものだ。未来などどこにもない。帰るべき故郷もない。なぜすべて終わりにしないのか自分でもわからない。でも、それは生き続けようとする自分…

GYBE!

鳥が一羽飛んできてこう言った。もう冬ですね。もう一羽飛んできてこう言った。鳥は人語を話しません。このような人間中心主義的な表現は即刻廃止されるべきです。私は困った。久しぶりに窓を開け、ベランダへ出てみたらこのありさまである。鳥たちはそれぞ…

Omnes una manet nox

コロナがほぼ治った。発症から5日経った。完全に平熱に戻ったのはきのうになってからだった。昨夜は眠る前によく考えがめぐった。仕事のこと、友人のこと、家族のこと。そして飛躍したあれこれがよぎりはじめたとき、それだけ頭が回るようになったことを心底…

Here's a diazepam

きのう、6年ぶりにメンタルクリニックに行った。友達が死にそうでつらかった。 去年の秋ごろから友達は調子が悪かった。朝元気に家を出て、数万の買い物をし、初めて会う人との約束をはしごし、酒をのみ、帰宅後いのちの電話にかけ、今日もつながらなかった…

ファックユー日常

もうすぐこの部屋から越す。あんまり心残りはない。もう6年ほど住んだ。この街には大学生のころからずっといる。もうそろそろ去りどきだ。新しい部屋からはバスの車庫が見下ろせる。夜は行き来するヘッドライトを眺める。家賃は予算ぎりぎりだが気に入ってい…

死の凡庸さ

仕事が全然終わらない。もうすぐ1年が終わろうとしている。2021年、とくに下半期は精一杯駆け抜けてきた。とはいえ何か格好のつくものを残してきたわけでもなく、単に息切れしているだけである。比喩を抜きにして、最近は呼吸が浅く、苦しい。ぬかるんだ道に…

子犬不在の部屋

「発想がつぎつぎ湧く」ことがなくなってきた。風に乗る青い鳥を追うような、楽しい夢想のひととき。 近ごろ鳥追っかけてないな、と気づいたのは実家に戻ってしばらく経ってからのことである。実家には自分の部屋がない。ほぼ誰かと一緒にいる状況で、ひとり…

twentysevenclub

27で死ななかったら途中で下車することは許されない気がする

福島第一原発神社

犬を改造する夢を見た。もともと居間では8匹ほど白い大きな犬を飼っていた。毛足の長い犬だった。それらの内臓を切り離してはそのうちの1匹の身体に押し込む。臓器を結ぶ管の感触が手に残っている。ホルモンを噛んだときに似た弾力をたたえていた。6匹の犬の…

欠格

佐世子は右目が極端に悪い。ある日ベッドに座って向かいの壁の時計を見たとき、頭部がひとりでに右へ回転し、自分が左目の視野をフル活用して時刻を確認していることに気がついた。左目を手で隠してみると部屋は途端に輪郭を失う。立てた膝にかけている布団…

分断の国で

生きることは贖罪である。最悪なニュースが暴れ回るなか、あたたかな部屋で編み物をし眠りにつく。私ばかり平穏に暮らしてごめんなさいと泣く声がする。すでにじゅうぶん背負っているのに。生きることは贖罪だがあがなえる罪は限られている。泣いてもいいけ…

ものぐさの主張

4,400円の靴下が欲しい。その前にいいかげん図書館に本を返さなければならない。本は2冊あってどちらも2か月延滞している。すぐできることほどやりたくない。原稿を読むのがはかどらない。なぜなら原稿は逃げないし目ん玉さえ無事ならばいつでもできる作業だ…

抵抗せよ

大学に入って、それまで本やネットの文章でしか目にしたことのなかった言葉が生身の人間の発声によって現前するのを体験し、いいところだなと思った。一方で、そうした固有名詞が会話を盛り上げるための気の利いた道具として用いられる場面にも間々立ち会っ…

歯列矯正リテーナーにおけるアナキズム的実践

最近アナキズム実践の本を読んで心が軽くなった。前の職場では、入ったばかりのころ延々コピー取りをやらされていた。コピー機があるのはフロアの隅、棚に囲まれてうす暗く、頻繁に人の出入りがあるわけではなかった。コピー機は壁に面して二台置かれていて…

求職票

ひととおり生活のあれこれを片付けられるようになってきた。今日なんかちょこっと掃除機をかけ米を炊いてカビキラーまでしてしまった。もちろん風呂にも入って洗い物もした。トイレも拭いた。自分なりに「でも・デモ・DEMO」の詞を実践するとこうなる。暗黒…

MJへ、エデン以前の愛

愛の人、マイケル・ジャクソン。幼いころは彼を悪人だと思っていた。スーパーニュースで観た、わが子をベランダから取り落としかける映像、被告として出廷する道中に車から投げキッスする映像。こいつ、訴えられてるのに、しかも子どもを虐待した罪に問われ…

厭な家

父は五人きょうだいの末っ子で、本人も兄たちも姉たちもそれぞれ子どもを二人ずつもうけていたから正月、おのおのが配偶者と家族を連れて実家に集うと居間はほとんど寿司詰状態だった。祖父は足が悪く高さのある座椅子に座っている。祖母は祖父のより少し低…

座りこんで光を見ている

haruru犬love dog天使のEP『Lonely』を聴きなおした。詞に共感する。何周もした。まとまった文章が読みたい。それで彼女が寄稿していた『ユリイカ』ビリー・アイリッシュ特集を買った。ビリー・アイリッシュは去年センター街でかかっていた中で唯一良いと思…

Lust For Life

K氏と電話してほんとにすごくて絶対死なないでほしいと思った。上司にコンビニで売ってた謎のホコリついた袋で仕事のどうみても途中でタイムアップになっただろという成果を送りつけてしまった。キャンドゥがやってなくて封筒を買えなかったのだ。やってたと…

西早稲田二丁目花ごよみ

まだ寒いころ、タンポポが咲く。ホトケノザが咲き、シロツメクサが咲き、ミモザを部屋に飾りたいとごねるうち桜の季節になる。アパートから出るとすぐ大きな桜の木があって、花見するのに勝手が良いと気づいたのは入居して五年目、今年の春になってからだっ…

唇について

ホラーっぽい携帯小説にはまってたころ、ある作品に「唇は体内の粘膜が裏返って顔にひっついているものだ」という表現が出てきたのをよく覚えている。話は唇から体が裏返って全身粘膜人間になる!みたいな展開を迎えるのだが(いま思えばジョジョ6部の影響だ…

Death and Night and Blood (Yukio)

昨年古本屋で買った『サンデー毎日』をやっと読んだ。古本屋と言っても開け放したガレージに本棚とカートを詰め込み本を並べまくったような造作で、バザー会場と表したほうが適切かもしれない。コンクリートに放られた段ボールに、「三島由紀夫特集」と書い…

公共精神局へ

公共精神局を知っているか。君は本日付でそこへ異動だ。私もよく知らないが、なかなか休みの取れないところらしい。きょうは挨拶だけしに行って、午後はゆっくり過ごしてもいいんじゃない、別に強制はしないけど。呼び出されて出社したら部長の部屋に向かわ…

コロナ禍(イメージの崩壊)

テレワークをするうち単語がばらけてきた。言葉を声に出すと、音がでたらめに並んでしまう。たとえば、「スプーン」は「スーンプ」や「スプンー」となる。「ス」で終わることもある。 誰もが知っているように、ものを説明するとき、どれほど言葉を重ねようと…

勝手な理由で墓を荒らすな

その昔、早稲田大学には「ジム・モリソン統一教会」なるサークルが存在したという。墓前で合同入会式でも挙げていそうな勢い。ジム・モリソンが葬られているペール=ラシェーズは100年以上前からパリの代表的な墓地で、『失われた時を求めて』にもその名を認…

スイミー

一昨日、美味しい美味しいおにぎりを食べた。しゃけとじゃこ生七味。とにかくうまい。具、米、海苔それぞれの風味が優れているのは確かだろう。ただ、なんだかよくわからないが、それ以上に総体として完全。どんどん喉へすべりこむ。ふわりと握られた米粒と…

Situations surrounding the youth (Situation of the youth in the employment ice age)

自分だけの城があれば何もいらないと思っている。 本を読み終えたあと私に残るのはいつもイメージや匂いのようなもので、既に具体的な言葉は消失している。言葉はメタモルフォーゼし、ひとつの建材として私の城に息づく。そういう読書こそ読書だ。ほかの人間…

Colossal Youth

カレー屋 電気突然消える ブレーカー落ちた? サプライズ?手拍子 すぐつく 笑い

星の砂・穴

通り道に死んだ鼠が転がっている。首がなくて、一昨日は鼠の姿をしていた。昨日はその道を通らなかった。夕方から大雨で、明けて今朝になり、ようやく晴れ、それでもときどき降った。天気雨は好きだ。すいと歩いた。鼠のことを思い出して引き返す。ふやけて…